「空想工房の絵本」という本で、初めて安野光雅さんの作品にじっくりと触れました。
この本では、空想上の絵が中心で、雑誌「数理科学」の表紙として描かれたものが集められています。どれもありそうで現実にはない絵にとても惹かれました。何が描かれているのかよく見ないとわからない絵や、また何を意味しているのか考えさせられる絵も多かったです。
安野さん自身子供の頃に玉落としのような遊びが好きだったと書いてあったのですが、私もそのような遊びが好きだったので、自分の感性と合うところがあるのかなと思います。
一方で、風景画、子供向けの絵本、本の装画やポスターの絵など幅広く作品を描かれています。
「旅の風景」という画集で、旅で訪れた日本や外国の街や自然の風景をスケッチした絵をいくつか見ましたが、空想工房の絵とはまた違った雰囲気です。そして、実際に描いている風景は、名所や旧跡などの景色を選ぶのではなく、自分が描きたいと思った景色に出会うまでとことん探したようです。確かに、なんの変哲もない、特にこれといった建物や自然の風景ではない場所をスケッチした絵が多いので、それらは安野さんがその時に描きたいと思った景気なのでしょう。
絵本では、物語や童話の場面を描いている絵が多いですが、特に一つの絵にたくさんの人物が細かく描かれているのは、一人ひとりが何をしているのかに見入ってしまいます。また、古典をもとにした絵本もあり、安野さんが「平家物語」を原典に書き下ろした文章に場面に沿って絵を描いている「絵本平家物語」を見ることができ、平家物語の世界を堪能することができました。
そして、物語や童話の場面を描いたお話の絵本だけではなく、お話のない絵が中心の絵本もあり、絵を見ているだけで時が過ぎていきます。
「安野光雅の本」という安野さんの作品を数々紹介する本を見ると、たくさん絵を描がかれているので、色んな種類の絵があることがわかります。すべて一人の作家の作品なのに、それぞれで印象が異なるのは不思議な気がします。