歴史思考 世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する
深井龍之介(著)、ダイヤモンド社
人は歴史から学べることは多いはず。
歴史上の偉人の人生や考え方は、自分たちの生き方の参考になるはず。
そのような自分の人生に参考になるような出来事や考え方が書いてあるのだろうと思い、この本を読みましたが、個々の出来事や考え方から学ぶというよりは、その背景にあるものごとの意味をよく考えることが大切だと気付かされました。
著者によると、まず現代の社会にある常識や価値観は、過去では決して当たり前ではなかったそうです。価値観は絶対ではなく、場所や時代によって変わります。例えば、お金を稼ぐことが常に良いことだったわけではないそうです。そうすると、今の常識や価値観から外れて、それが原因で悩んでいても、今の自分を取り巻く状況を一歩引いて客観的に見ることによって、それにとらわれることはないと考えられるというわけです。
また、短期的なスパンで自分や他人を評価しない方がいいようです。例えば、イエス・キリストや孔子は今でこそ誰もが知っている偉人ですが、彼ら自身の人生そのものはあまりうまくいかなかったようです。だから、今の自分の人生がうまくいっていなくても、あまり思いわずらう必要はないということです。生きることに意味があるのであって、その人生がどういう意味を持つかなんて、分かりっこないのだから、自分の価値を信じて生きたほうが、毎日楽しくなると著者は述べています。
一方、カーネル・サンダースは、65歳を過ぎてからケンタッキーフライドチキンのビジネスを築き上げました。この人はそれまで社会の変化により何度も破産などを経験しています。著者は、若いうちから絶望したり有頂天になるのはやめて、せめて80歳くらいまでは待ちましょう、人生、何がどうなるかなんてわからないと述べています。ただし、成功するまであきらめるなということではなくて、人生のクライマックスがいつやって来るかは、誰もわからないということだと思います。
人生で成功するかどうかは、価値観によって左右されますが、価値観は場所や時代によって変わります。つまり、絶対的な価値は存在しないので、現代を生きる私たちは特定の価値観に依存しないほうが楽、大切なのは、その価値観が唯一絶対だと思い込まず、他の価値観も認めておくことで、そのほうが、現代では生きるのが楽になるはずだと著者は主張しています。
確かに、自分と違う価値観に出会うと苦しいことがありますが、それを認めて距離を置くことのほうが賢明なのでしょう。