THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す
アダム・グラント(著)、楠木建(監訳)、三笠書房
「自分の考えが常に正しいわけではない。」ということは、なんとなく分かっていたつもりですが、この本を読んで、それは具体的にどういうことで、実際にどのような考えや行動を取るべきなのかについて整理することができました。
自分が年齢を重ねてある程度の経験をしてきた中で、これはこうあるべきだという考えが自分の中にかなり積み重なってきているように思います。ある程度自分の考えがまとまっていないと、なかなか整合性のある行動をできないことはあると思うので、自分の考えをしっかりと持つこと自体は必要だと思います。しかし、それが必ずしもどんな時やどんな場面でも適切かと言われれば、そうではないことも頭では理解できます。
したがって、まずはものごとを常に再考することが大切であるという著者の主張には、うなずけます。そして、再考するためには、特別なスキルや知能などは必要なく、そのような態度や心構えを持つことが重要だそうです。確かに、再考することは自分の考えを一旦正しくないかもしれないと考えることなので、まずはそのように考えること自体にハードルがあり、それを乗り越えるのは自分の意志が必要だと思います。
自分の考えが間違っているかもしれないということを常に考えていると、自分に自信が持てなくなってしまうかもしれません。しかし、本書では、自分の能力を疑うのではなく、自分の考え方に対して謙虚さを持つことが必要だと述べています。つまり、将来の目標を達成するのに自分に十分な能力が備わっているという自信を持ちながら、そのために正しい手段は何かと現在の自分に問う謙虚さを持つことだそうです。
この自信と謙虚さのバランスを取るのは、言うは易く行うは難しだと思うのですが、自分の考えは常に再考して更新していくことが必要なのだと考えれば、何とかできそうな気がします。
また、他人が自分の考えを再考するようさせるには、どうすればできるかについても述べていますが、結論としては、人は他者の行動や考え方を変えることはできない、という前提に立っています。つまり、人々を変えようとするのではなく、彼らが自力で変われるように、動機を見つける手助けをすることしかできないということです。これは私も全く同感で、自分が他人に対してできることをするしかないと思います。
最後に、自分の考えを再考することは必要だが、自分の価値観、すなわち自分が大切に思っている原理は確固たるものを持っておくべきだそうです。自分の価値観を基底に、その時々の状況に応じて、自分の考えややり方を再考することにより、その時の最善の方法を選択することができるのだろうと思います。