過去にこれまで読んできた本について、読んだあとに書き留めたことなどをもとに改めて一言ずつ書いてみます。
災厄の町 エラリイ・クイーン(著)
ある田舎町の名家で起きた奇怪な毒殺事件を名探偵エラリイが解き明かしていく。
トリックの謎解きよりも人間ドラマが描かれていて、各人物の謎を解いていくところがおもしろい。
また秀でたミステリの常だが、登場人物の何気ない言葉にも深い意味があったことが後で分かる。
琉球OKINAWA 小松健一(著)
沖縄の風景や人びとに関する写真集。
沖縄の自然や暮らしだけでなく、沖縄戦や米軍基地に関わる写真も含まれる。
きれいな海や緑、祭りや食べ物など自分たち観光客が目にするものだけを見ていると気づかないが、基地に関わる写真を見るとそこには沖縄が抱える問題があることを認識する。
この米軍基地の問題は沖縄だけの問題ではなく、日本の問題でもあると思う。
言葉の周圏分布考 松本修(著)
著者が、いくつかの言葉に対する方言の日本全国での分布を調べて分布図を作成したところ、京都を中心とした円周上に同じ方言が分布していたようだ。
例えば、東北地方と九州で同じ方言が使われていたりする。
これは京で次々と生まれた新しい表現が何百年もかけて、その周辺に広まっていったからだそうだ。
また沖縄には、古い日本の言葉が残っているらしい。
確かに言葉は時代とともに変化して、人がそれを伝えていくことを考えれば、十分ありえることだなと思う。
ただし、今はいろんな方言が残りづらい時代でもあると思う。
フェイスブックの失墜 シーラ・フレンケル&セシリア・カン(著)
フェイスブックのこれまでの歩みを、様々な人々への取材をもとにディテールが描かれている。
フェイスブックがどんなコンテンツでも基本的に尊重しようとする姿勢は、ある程度理解できるが、それらが人々に与える影響を考えると何らかの規制を設けるべきなのかもしれない。
これは、ある特定の社会での問題ではなく、自由資本主義の抱える問題の一つだと思う。
現代のように個人のコンテンツがあっという間に全世界に広がるインターネットの世界では、何らかのグローバルな規制が必要なのかもしれない。
女子大で「源氏物語」を読む 木村朗子(著)
女子大での源氏物語の講義を収録したもの。
講義ごとに学生たちのコメントも載せられていて、興味深い。
自分は今まで源氏物語を読んだことがなかったので、この本である程度のあらすじを読むことができて、おもしろかった。
いろんなタイプの女性が登場して、光源氏がいわば彼女たちを口説くのだが、そのやりとりが男女の機微を表しているようで趣がある。
やはり、源氏物語がいつの時代でも読まれてきた所以だと思う。
人類冬眠計画 砂川玄志郎(著)
ハツカネズミという冬眠をしない動物を冬眠のような状態にする研究を成功させた著者が、人間の人工冬眠の可能性について述べている。
そもそも著者は医師として重症患者を搬送するときに冬眠のような状態であれば、リスクが少なくなるだろうという発想から冬眠の研究をするようになったそうだ。
医療の現場でも活用できる技術なのであれば、人工冬眠は単なる夢物語ではなくなるように思う。