ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?
ダニエル・カーネマン(著)、村井章子(訳)、早川書房
テレビのある番組で中学生の少年が、「この本が面白くて、今夢中になって読んでいます。」とコメントしているのを聞いて、ませた中学生だなと思いながらも、気になって手にとって見ました。すると、私の関心のある人間の行動について経済学者が書いている本だったので、迷わず買ってしまいました。
人間が意思決定をする際に行う思考については、システム1という速い思考とシステム2という遅い思考があると著者は説明しています。システム1の速い思考とは、いわゆる直感に基づいた判断・選択になります。そして、システム2の遅い思考とは、時間をかけて頭を使う熟慮熟考をして判断・選択をすることです。
意思決定をするのに時間を掛けることができない場合は、もちろんシステム1を使うことになりますが、システム2は使うのに努力を要するので、時間を掛けることができる場合でも、人間の特性としてなるべくシステム1で済まそうとするようです。もしシステム1での意思決定が、全て正しいのであれば問題ないのですが、人間はヒューリスティックというものを使って判断するために、必ずしも正しい意思決定に導けるわけではないようです。ヒューリスティックとは、人間が経験や感情に基づいた無意識に使う法則や手がかりで、確かにそれを使うと意思決定のスピードは早くなります。
また、システム2は熟慮熟考をするといっても常に完璧なわけではなく、できるだけ努力はしたくないという人間の心理から、システム1の影響を受けたりするようです。
著者は、いろいろな実験結果や実例から、これらシステム1とシステム2の働き方を詳しく説明して、人間の意思決定について述べています。やはり、人間の行動は必ずしも合理的な判断や行動をするわけではないということを実証していますので、この理論は行動経済学にも多大な影響を与えたようです。
改めて自分自身の行動を振り返ってみても、合理的な行動をしているようで、そうでもなかったりして、なんだか一貫性がないというか、整合性がないなと自分で思ったりしたものです。しかし、この本を読んで人間とはそういうものだと納得をしました。また、そのような思考をすることがわかったので、これからは今自分がどちらの思考で意思決定しているかにも意識をすることができ、できるだけ正しい意思決定ができるかもしれないと期待をしています。でも実際には難しいだろうな。