古事記完全講義
竹田恒泰(著)、学研パブリッシング
私自身日本の古代史に興味があることもあり、「古事記」についてはいつか完読したいと思っていました。しかし、どの本で古事記を読むのが良いか選びづらかったこともあり、これまでなかなかじっくりと全文を読む機会がありませんでした。そんな折に、この本に出会ったのですが、この本で古事記全文を読んだのと同様の経験ができたと思っています。
この本は、明治天皇の玄孫である竹田恒泰氏が、古事記全文を36時間に渡る講義で解説した内容を書籍化したもので、講義形式ですべての話の内容が記述されています。したがって、古事記の本文を読むのではありませんが、古事記のほぼ全てがわかるような内容になっています。
天照大御神の天の岩戸の話など子供の頃に親しんだ話はもちろんのこと、神話の世界から奈良時代の推古天皇までの話が解説されており、古事記全巻に記載されている話を改めて理解することができました。
私自身が以前古事記本文を読もうとして、よく躓いていたのが、あまりもたくさんの登場人物(神様)が出てくるため、神様の名前や人物の名前をすべて記憶できなくて、途中で話が混乱してくることがありました。しかし、竹田氏は古事記完読のコツは、神名や人名がたくさん出てきても、すぐに忘れることだと述べています。これには驚きましたが、確かに神名や人名を気にせずに読むと、スムーズに読み進めることができましたし、覚えるべき神様などは何度も登場するので、自然と覚えるようになってきます。
また、この本に記載されている講義自体が、爆笑また爆笑、はたまた脱線に次ぐ脱線で大変面白く、飽きることなく読み進めることができます。古事記に書かれている内容を、現代の状況に置き換えて話したりしているので、大変実感が湧くと同時に、書かれている内容を冷静に考えると結構ハチャメチャな話が多いです。神様がたくさん生まれたかと思うと、簡単にたくさん亡くなったり、男女の恋愛や諍いなどそこらのメロドラマに負けないくらいの話がたくさんあったりします。今も昔も、男女の話は変わらないなあと思います。
古事記は奈良時代に天皇の勅令で編纂された歴史書なので、当時の政治的な背景が反映されていると思いますが、日本や日本人の根源を知る上でも貴重な書であることは間違いないと思います。