それをお金で買いますか 市場主義の限界
マイケル・サンデル(著)、鬼澤忍(訳)、早川書房
何でもお金で買える世の中になっていることへの疑問や警鐘を鳴らす著者の主張には、私自身は大変賛同できます。
すべての物事、例えば教育・健康などの道徳的にも問題があると思われるものを、何でも市場で取り扱うことは大変危険だと感じています。
また、まさに市場主義で動いている企業活動でさえ、インセンティブという市場原理だけではうまく動かないことがあると思っています。
つまり、人にはそれぞれ異なった考えや思いというものがあるのだから、市場だけが世の中の唯一の問題解決の方法ではないと考えています。
以下に、本書で私が学んだことや気づきになった点など挙げてみます。
- 経済効率とは、社会に属するあらゆる人の経済的福利を最大化するように財を割り当てること
- 自由市場は、財の供給を支払い意思額によってその財を最も高く評価する買い手に割り当てること
- 市場の道徳的限界を考え抜く必要がある
- お金で買うべきでないものが存在するかどうかを問う必要がある
- 罰金と料金の違いはなにか。罰金は道徳的な非難を表しているが、一方、料金は道徳的な判断を一切含んでいない。
- インセンティバイズ:インセンティブを与えることによって、人を動機づけたり励ましたりすること
- 非市場的な状況にお金を導入すると、人々の態度が変わり、道徳的・市民的責任が締め出されかねない
- 人々のやる気を引き出すために、金銭インセンティブを利用するならば、たっぷり払うか全く払わないかのどちらかにすべき
- 市場とは、拡散した情報、さらには隠れた情報を極めて効率的、効果的、タイムリーに収集するものなので、先物市場は予測に役立つ
- 企業が経営幹部だけではなく一般社員にまで生命保険をかける「用務員保険」と呼ばれる保険がある
- 市場の効率性を増すこと自体は美徳ではない
- われわれは、市場がふさわしい場所はどこで、ふさわしくない場所はどこかを問わざるを得ない
- 市場の問題は、他の人々とともにどう生きることを望むかという問題でもある