宇宙からの帰還
立花隆(著)、中央公論社
著者がNASAのアポロ計画などに参画した宇宙飛行士へ取材やインタビューをして、それらをもとに書かれた本です。
宇宙から地球をみたときの彼らの心の内面に現れたものを聞き出していくと、彼らからは、「地球とはなにか」、「人間とはなにか」というとても哲学的な体験が語られていきます。
宇宙に行くと、なにか人生観のようなものが変わるのかと、とても不思議な気持ちで読みましたが、人間は視野が広くなると、考えや思いが変わるのかもしれません。
以下に、本書で宇宙飛行士が語った言葉で、私が感心したり、興味を引いた点など挙げてみます。
- 体験は、すべて時間が経過していくとともに成熟していく。
- C・P・スノー「二つの文化」:現代文化の特徴は、科学技術系の文化と人文系の文化の二つに引き裂かれていること。
- NASAでは、思想的に深みのある書物を読んだ人は極めて少ない。
- 宇宙体験をすると、前と同じ人間ではありえない。
- 宇宙体験の内的インパクトは、宇宙飛行士の人生を変えてしまうものがある。
- 月では、祈りに神が直接的に即座に答えてくれる。
- 月の上を歩くというのは、人間として全く別の次元を体験するのに等しい。
- 宇宙体験後は、リラックスして人生を生きるようになった。
- 自分のエネルギーを外に向けるより、内側に向けるようになった。
- 家庭とか家族とか、自分の内的精神状態というものを第一義的に考えるようになった。
- 人為的環境汚染より、自然による環境汚染のほうが量的には凄まじい。
- 人間も地球の自然の一部なのだ。
- 内面的には人間は過去の体験から切り離せない。
- 神の存在の認識、神の名は宗教によって違うが、同一の至高の存在がある。
- 何らの目的なしに、何らの意志なしに、偶然のみによってこれほど美しい地球が形成されるということはありえない。
- 我々は無限の宇宙の中にあって、ほんの微小な部分に閉じ込められてある存在なのだ。
- 精神的インパクトを受けるためには、時間的余裕とその中で生まれる精神的余裕とが必要。
- 根源的な「なぜ」、存在論的な「なぜ」に、科学は答えることができない。
- 人間に知覚されていない存在は、まだいくらもあるだろう。
- 人間の営みより、自然の営みのほうが比較にならないほど大きい。
- 我々はどこにいっても結局は地球人だ。
- 各宗教の教祖となったような人は、この世界のスピリチュアル・ワンネスに触れた人々なのだ。
- 神秘的宗教体験に特徴的なのは、そこにいつも宇宙感覚(コスミック・センス)がある。
- 地球は一つの巨大な生物である。
- 人間を始めとする様々な生物は、この巨大生物にいわば寄生している微小生物に過ぎない。