過去にこれまで読んできた本、特に小説について、読んだ当時に書き留めたことなどをもとに改めて一言ずつ書いてみます。
黄金旅風 飯嶋和一(著)
江戸時代の長崎が舞台。
平左衛門と才介の二人が、長崎で貿易により財を成そうとする大名から、長崎の民を守ろうとした。
二人の私心のないところが、器の大きさを感じさせる。
自分の欲にだけ目がくらむのは、やがて破滅を招くことを実感させる物語だ。
スナック墓場 嶋津輝(著)
少し年配の女性を中心に描いた短篇集。
日常が何気なく過ぎていくが、少しどこか不思議な謎があったりする。
自分のものさしだけでは、人は理解できない。
人それぞれにいろいろな人生があるはずだということを、改めて思わせてくれる。
しらふで生きる 町田康(著)
大酒飲みだった筆者が断酒をした話。
とくに理由があるわけではなく酒をやめたところが、何かをやめるときはそんなものかと思う。
酒をやめてから、次の境地に至ったらしい。
「ゆっくりと立ち止まりながら歩むと、そこに意外な喜びや驚きがある。草が生えたとか、雨の匂い、人のふとした表情の中にある愛や哀しみ。急いで通り過ぎると見落とし、見過ごすようなもの。けれども、それこそが幸福である。」
酒をやめてみるのもいいのかな。
悪魔はすぐそこに D.M.ディヴァイン(著)
大学を舞台にした殺人事件。正統派のミステリーだ。
各人物の描写やいくつかのサイドストーリーが、矛盾なく結びついていくのはさすがだと思う。
登場人物が個性的だが、どこかにいそうな気がするので、無理なく読みすすめることができた。
袋小路の男 絲山秋子(著)
ある男のことを想い続けている女。
お互いに結婚もせずに何年も過ごす。
男もまんざらでもなさそうだが、この関係は一体何?
人は不思議なものだ。理解をしようとすることが間違いだろう。
大切なのは、自分がどのように感じるかなのだろう。
赤朽葉家の伝説 桜庭一樹(著)
祖母・母・子の三代の物語。
戦後の高度成長期から現代までの社会も併せて描いている。
自分の人生とも重なる部分があって、時代の流れというものを感じることができた。
冒頭に出てくる謎も最後に解き明かされるように、矛盾ないストーリーになっている。
この物語に出てくる自分の好きなことをして暮らせる高等遊民には憧れるなあ。
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