ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す
山口周(著)、プレジデント社
資本主義でのビジネスの役割とは一体何だろう?
ビジネスは本当に人を幸せにするのだろうか?
今後もビジネスは人々の暮らしに必要なのだろうか?
私自身もこのような疑問を持っており、何らかのヒントが得られるのではないかと思い、手にとってみました。
結論としては、「ビジネスはその歴史的使命を終えつつある。」というのが著者の主張です。確かに、この本を読んでみて、少なからず日本ではそうではないかと私自身も思いました。
以下に、本書で記述されていることで、私の気づきになったり、重要だと思った点など挙げてみます。
- 真に豊かで生きるに値すると思える社会にはなっていない。
- 経済をこれ以上成長させることに、もはや大きな意味はない。
- 意味も意義も感じられない営みに駆り立てられて、高い目標を達成せよと圧力をかけられた人は、精神的に壊れてしまう。
- 「文明的豊かさを生み出すビジネス」から「文化的豊かさを生み出すビジネス」への転換が必要。
- 「より良い社会」の実現に、私たち人間の持っている才能や時間という資源を投入するべき。
- 市場経済が健全に機能すれば、企業の利益は長期的にゼロの完全市場に至ることになる。資本主義の本義を資本の無限の増殖を目指すのだとすれば、利益ゼロの完全市場は望ましくないことになり、むしろ市場経済の機能を阻害するような制約条件を作り、均衡状態に至ることを邪魔するのが資本主義である。市場経済と資本主義は真逆の概念である。
- 「便利で快適な世界」を「生きるに値する世界」へと変えていく。経済性に根ざして動く社会から、人間性に根ざして動く社会へと転換させる。
- 社会が躍起になって求めているイノベーションが富の移転しか起こさず、結果として失業と格差の拡大しかもたらさない。
- マルクスは、資本主義によって文明化が一定の水準に達した社会においては、もはや労働は苦役ではなく、それぞれの個人がそれぞれの実存を十全に発揮するための、一種の表現活動となることを予言していた
- 重要なのは「システムをどのように変えるのか」という問いではなく、「私たち自身の思考・行動の様式をどのように変えるのか」という問いである。
- 未来のために、苦しい今を頑張るというインストゥルメンタルな思考様式から、この瞬間の充実のために今を生ききるというコンサマトリーなそれへと転換する。
- 仕事をもらえた人も、仕事をもらえなかった人も、安心して暮らせる社会がいい。(「マタイによる福音書」イエス・キリストの言葉に対する著者による解釈)