過去にこれまで読んできた本、特に小説について、読んだ当時に書き留めたことなどをもとに改めて一言ずつ書いてみます。
レファレンスと図書館 大串夏身(著)
サブタイトルにあるように「ある図書館司書の日記」が中心に書かれている。
これまで、図書館では本の貸し出しがメインのサービスだと思っていたが、レファレンスというサービスも重要な仕事であることがわかった。
日々の問い合わせは、本当にピンからキリまであるようで、本や資料に関するものばかりではないようだ。そのような問い合わせにひとつひとつ丁寧に対応していくさまを読むと、司書という仕事は大変だなと思う。
今度自分が調べ物をしたいときは、一度図書館のレファレンスサービスを利用してみたいと思った。
光圀伝 冲方丁(著)
水戸黄門の生涯を描いた物語。
テレビ番組のイメージが強いが、水戸黄門という人は徳川家の中でひときわ異彩を放っていたことが分かる。
多彩な人で人望もあったので、将軍になってもおかしくなかった人だと思うが、世の中の義を重んじたため、一生序列を守り貫き通した。
現代の価値観からは、少し窮屈すぎるような生き方だと思うが、その時代では真っ当なことだったのだろう。
「日本の伝統」の正体 藤井青銅(著)
日本で伝統と呼ばれているしきたりなどについて、その起源といつ頃始まったかを説明している。自分が日本の伝統と思っていたことが、実はかなり明治以降に始まっていることが多いようだ。そして、その起源は、結構商業的な目的であることも多い。
少なくとも自分が生まれてから始まったことを、自分としては伝統とは呼べない。
いずれにしても、その内容が妥当なものかどうかをじっくりと考えることも必要だろう。
屍者の帝国 伊藤計劃X円城塔(著)
屍者の脳に、ある指令をインストールして操る技術が活用されている世界。それも明治維新頃の19世紀後半が舞台。
歴史上の人物もたくさん出てきて馴染みやすいが、彼らの人物像やエピソードが前提になっていたり、ストーリーが複雑だったので、自分が正しく理解できたかはすこしあやしい。あとは自分の想像力に問題があるためか、抽象的な場面の描写は自分の頭の中でなかなかイメージしづらかった。
屍者を蘇らせる技術をなぜ開発するのか?この小説によると、それは科学ほど面白いものはなく、それを求めるのは人の本能だかららしい。このような説明を読んで、それは現代のAI開発に通じるものがあるのではないかと思った。つまり、何のためにAI開発をしているのか目的をきっちりと議論することも必要なのではないかと思う。
谷崎潤一郎を知っていますか 阿刀田高(著)
谷崎潤一郎の作品を、著者の感想を混じえながら紹介している本。
それらの作品を一度は読んでみたいと思いつつ、これまでどの作品も読んだことはなかったので、参考になった。
有名な作品は映画化されたりしているので、なんとなくあらすじは知っていたつもりだったが、作品を引用しながら解説されているので、どのように物語が展開していくのかよくわかった。
谷崎潤一郎の作品は重厚そうな感じがしていたが、結構読みやすそうな作品が多いようだ。
男と女の愛と美がほとんどの作品のモチーフなので、いつの時代でも通ずるところがあるのだろう。