書評・読書ログ:繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史:マット・リドレー

繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史

マット・リドレー(著)、太田直子、鍛原多恵子、柴田裕之(訳)、早川書房

これまで人類がどのように繁栄してきたか、つまり物質的に豊かになってきたかを、人類誕生から現代までを振り返っています。

今日基本的には、裕福な人達だけではなく、人類全体として豊かになってきています。すなわち、生活をする上での基本的な欲求は、満たされてきているようです。それに伴い、人々の幸福感も高まっているそうです。そして、著者は未来についても、この繁栄が続くと楽観的に見ています。

しかしながら、このように人類の歴史を捉えることは、確かに世界の見方の一つなのでしょうが、私としては違う見方も存在するし、果たして楽観的でよいのかとも思います。

以下に、本書で記述されていることで、私の気づきになったり、興味を引いた点など挙げてみます。

  • 何かの価値を正しく評価するには、それを手に入れるのにかかる時間を計るといい。
  • 自分のライフスタイルにまつわる選択を自由にできる社会に暮らすことから、幸せの度合いが大きく増える。
  • 若い世代が上の世代の生活を支えられるのは、イノベーションのおかげで豊かになっているから。
  • 調理のおかげで、ヒトは大きな消化管と引き換えに、大きな脳を手に入れることができた。
  • 人間はものを交換し始めて、実質的に集団的知性を作り上げるきっかけになった。
  • 専門化や分業により交換すれば、それがどんどん増殖する。
  • 専門化は専門知識・技能に繋がり、その専門知識・技能が進歩につながる。
  • 見知らぬ人と取引するという能力は、他人を信頼する人間の本能的な素質から生じる。
  • 信頼は人類の歴史を通して、しばしば挫折を経験しながらも、交換のおかげで着実に発達し、広がり、深まってきた。
  • 人類の繁栄の歴史は、双方が恩恵を得るノン・ゼロサム取引の発見に尽きる。
  • 人々を養うためには、肥料の使用量を増やし、遺伝子組み換え作物を使う。牛と羊を減らし、魚と鳥と豚を飼育拡大する。鶏と魚が穀物を肉に転換する効率は牛の三倍、豚はその中間である。
  • 有機農業運動は、農業技術のメリットを活かす機会を逃している。
  • ほぼ本質的に、すべての作物は遺伝子組み換えされている。
  • ローマ帝国の衰退は、消費者や交易者を自給農民に戻したため。
  • 再生可能でない、地球に優しくない、クリーンでないエネルギーに頼るようになって初めて、経済成長が持続可能になった。
  • 自然に均衡はない、絶え間ない活動のみ、万物は流転する。
  • 私達はこのままやっていけるのか?答えは、「ノー」。
  • 寒くて貧しい世界より、温暖で豊かな世界のほうが人類と生態系の双方にとって良さそう。

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