山口晃さんの作品について
画家の山口晃さんの作品に最初に触れたのは、「すずしろ日記」という日常の些細なことをエッセイ風に書き綴った漫画でした。そこに書かれていた話は本当にユーモアたっぷりで、奥さんとのやり取りには大いに笑えましたが、描かれていた絵自体はもちろんプロが書いている絵だと思いましたが、漫画なのでゆるーく描かれているなという印象でした。
それから、詳細は忘れてしまいましたが、山口さんの描いた武士の絵を見る機会があり、漫画とは異なりとても精密で写実的だけど、どこか幻想的でもある絵を描く人だなと思って関心を持つようになりました。そして、山口晃さんの作品でとても興味を惹かれたのは、建物や乗り物などをとても精密に描いている立体的な迷路のような絵を作品集で見たときでした。まるで迷路の地図を見ているようで、時間の立つのも忘れて細部を食い入るようにして飽きずに眺めていました。
私自身子供の頃を思い返してみると、玉落としという立体的な迷路を玉が転がり落ちていく玩具に夢中になったことがありました。また、迷路の箱の中で玉を落とし穴に落とさないように転がす玩具も好きで、自分で紙の箱で迷路を作ってビー玉を転がしてよく遊んでいたことを思い出しました。おそらく、そのような私の嗜好に山口さんの絵がどんぴしゃりとハマったのかなあと思います。そして、山口さん自身も玉落としのおもちゃが好きだったようで、実際にそれを見立てた作品も作られています。
また、そのようなメカニカルなところだけではなく、一つの絵にたくさん描かれている人物の表情やしぐさもとても細かくて丁寧に描かれており、これもひとつひとつ見ていく楽しみがあります。山口さんの絵の特徴として、メカニカルなところと人間とが融合しているところが、なんともいえず面白いと思います。
私自身芸術的な評価については全くわかりませんが、山口さんの絵は何故か見入ってしまいますので、私にとっては素晴らしい画家さんで、これからも新しい作品を楽しみたいと思います。ここまであれこれ述べてきましたが、私が感じたことを伝えるには、やはり実際の作品を見ていただくのが一番かと思います。