書評・読書ログ:生命科学的思考:高橋祥子
ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考
高橋祥子(著)、ニューズピックス
生物の本能とは、生物が生存していくために必要な仕組みなのに、人間が本能に従って欲望のとおりに生きていては、争いなどのいろんな社会的な問題が起こるのはなぜか?
そもそも生物は、自分自身すなわち個体を生存させることと、種の存続のために集団を繁栄させることを目的としているようですが、それぞれその目的を実現するためには、利己的な考え方と利他的な考え方がそれぞれ必要だと思われます。ただし、利己的な考え方と利他的な考え方は相容れない部分があるように思いますので、その矛盾はどのようにして解決していくべきなのかを知りたいとこの本を手に取りました。
本書では、個人として自分自身がどのように行動すべきかだけではなく、企業やビジネスの観点からもどのように行動すべきかということが述べられていて、大変興味深く読むことができました。
以下に、本書で述べられていることで、私の気づきになったり、重要だと思った点など挙げてみます。
- 遺伝子に抗って思考するという非効率的な行為こそが、人類にとっての唯一の希望である。
- 生命原則は、個体を取り巻く外界の環境が常に変化するものであることを前提に作られています。
- 生命科学の立場からゲノムデータを見れば、他人と違うことは生命の歴史からして当たり前であり、命をかけて多様性を作り出してきた生命の最大の特徴であり、資産でもあると理解することができます。
- 課題のほとんどは、客観的に設定された課題ではなく、それが解決された状態を私達が主観的に望むことで初めて課題として存在するものです。つまり、自ら選んで課題を設定できるということ自体が、極めて自由かつ主体的な性質を持つものです。
- 利己主義の延長線上にある利他主義として、他者のことも考えて行動することで集団としての生存に繋がり、結果として自分も生き延びることになります。
- 矛盾に直面した場合には単に悩んで終わるのではなく、自分はどのような複数の思考枠を持っているのかを冷静に捉えた上で、その両方を実現できる道を考え抜き、行動に移すことが大事だ。