書評・読書ログ:未来への大分岐:斎藤幸平・編
未来への大分岐 資本主義の終わりか、人間の終焉か?
マルクス・ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソン、斎藤幸平(著)、集英社
若き経済思想家である斎藤幸平が、下記の知識人たちとの対話を通じて、資本主義と民主主義の危機をどのように乗り越えて未来を作っていくかを探っています。
哲学界のロックスター:マルクス・ガブリエル
革命の政治哲学者:マイケル・ハート
鬼才の経済ジャーナリスト:ポール・メイソン
彼らはいずれも、人類は今まさに大きな分岐点、未来を大きく左右するような選択を迫られていると認識しています。私自身も日本を始め今の先進国と呼ばれている国々では、これまでのような資本主義ではいつか行き詰まるのではないかと思っていましたので、未来にどのような選択肢があるのかについて興味を持って読みました。まだ自分の考えが整理されているわけではありませんが、何らかの行動を起こさない限りは何も変わらないことだけは認識を新たにしました。
以下に、本書で語られていることで、私の気づきになったり、重要だと思った点など挙げてみます。
- 新しい技術に規制をかけずに、ただ技術を加速させていくならば、待っているのはサーバー独裁、あるいはデジタル封建主義だろう。
- 他者の指示や手引きに頼らず、自分の知性を使うということを徹底すべき。
- 資本主義の成熟については、潤沢な社会への移行が始まっているということです。ポストキャピタリズムの社会とは、すなわち潤沢な社会だと言えるでしょう。
- 誰にも所有されない生産物を作り出すことが、生産の主流になれば、資本主義は終わります。
- 人々が強制的・義務的な仕事から開放され、無償の機械を利用して必要なものを生産する社会。そして、100%再生可能エネルギーと天然資源の高いリサイクル率が実現される潤沢な社会となるでしょう。
- 大事なのは、仕事以外の生活・人生があることを人々に伝えること。雇用創出にこだわるのではなく、人間性に重きを置いた生活を作り出すことのほうが重要です。
- 大分岐の時代だからこそ、自由で、平等な社会を多くの人と共に作り上げることを大きなスケールで徹底して思考しなければならない。