スモール イズ ビューティフル 人間中心の経済学:E・F・シューマッハー

スモール イズ ビューティフル 人間中心の経済学

E・F・シューマッハー(著)、小島慶三・酒井懋(訳)、講談社

「大きいことはいいことだ。」と一昔前のコマーシャルではないですが、今の世の中はなんでも大きくすることが素晴らしいことだと思われているようです。しかし、本当にそうなのだろうかと私は最近良く思っていました。

そんな思いの中、出版されたのは1973年と古いですが、「スモール イズ ビューティフル(小さいことは素晴らしい)」というタイトルの本があることを知り、早速読んでみました。

著者はドイツ生まれの経済学者ですが、当時の社会や経済学界に警告を発し続けていたようです。

例えば、現代人は自分を自然の一部とはみなさず、自然を支配、征服すべきと思っているが、自然と調和して生きていく道を学ばなければならないとか、ただひたすら富を追い求めるのを目的とする生活態度、つまり唯物主義は自己抑制の原理を欠いているので、有限な環境とはうまく折り合えないと主張しており、これらは現代でも通じる論点だと思います。

また、経済学では利益があるかどうかという、たった一つの側面しか問題にしないために、値段のつけられないものにも値段をつけようとするとか、経済学は量的分析に専念するだけで、物事の本当の性質を見ようとしないので、国民総生産の伸びは、経済学上は善に決まっているという意見にはとても共感します。

数値だけを伸ばすこと、大きくすることだけに本当に意味があるのかという疑問に対して著者は、自然界は成長・発展をいつどこで止めるかを心得ている、つまり、成長は神秘に満ちているが、それ以上に神秘的なのは、成長が自ずと止まることであると述べています。この言葉で成長ということに対しては、改めて考えさせられました。

全体を通して、量より質であるとか、自然との調和ということが述べられていますが、これらは現代でも同様に重要なことだと思います。本のタイトルとも関連しますが、次の著者の意見は、今の社会にも大切なように思えます。

「人間は小さいものである。だからこそ、小さいことは素晴らしいのである。巨大さを追い求めるのは、自己破壊に通じる。」

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